目の前には箱が在る。
掌に収まるほどの、角の取れた立方体で、
中に何が入っているかは見当がつかない。
足で突き転がしてみると、何かの音が聞こえた。
もう一度転がして耳を欹てると、凛とした鈴の音が残響して、確かに鳴っている。
やけに淀みのない音がしていた。
成る程、どうやら箱には鈴が入っている。
箱ならば、当然蓋が有る筈だ。足で転がして隅まで確認するものの、
どうも蓋の開くようの仕掛けは見つからない。
口を開き、箱に歯を突き立て、力を込めて噛り付く。
開かない。開かないのでまた齧る。
齧るたびに鈴の音が鳴り、それがまた期待感を煽る。
これ程に良く鳴る鈴だ。
存外見て呉れも素晴らしいに違いない。
噛り、齧り、転がし、噛り、鈴が鳴る。鈴が鳴ればまた齧り付く。
齧れば鳴る。
どれ程の時間が経ったのだろうか。
頑として箱は開かず、あれだけ力を込めたのに傷一つ表面に残してはいない。
このままでは悪戯に顎を疲弊させるだけだ。
漠然とそう思った。
ようやく諦めのついた頃、下げた目線の先に砂で汚れた前足が目に入った。
ふと、昔、自分が人間だった頃のことを思い出した。
掌に収まるほどの、角の取れた立方体で、
中に何が入っているかは見当がつかない。
足で突き転がしてみると、何かの音が聞こえた。
もう一度転がして耳を欹てると、凛とした鈴の音が残響して、確かに鳴っている。
やけに淀みのない音がしていた。
成る程、どうやら箱には鈴が入っている。
箱ならば、当然蓋が有る筈だ。足で転がして隅まで確認するものの、
どうも蓋の開くようの仕掛けは見つからない。
口を開き、箱に歯を突き立て、力を込めて噛り付く。
開かない。開かないのでまた齧る。
齧るたびに鈴の音が鳴り、それがまた期待感を煽る。
これ程に良く鳴る鈴だ。
存外見て呉れも素晴らしいに違いない。
噛り、齧り、転がし、噛り、鈴が鳴る。鈴が鳴ればまた齧り付く。
齧れば鳴る。
どれ程の時間が経ったのだろうか。
頑として箱は開かず、あれだけ力を込めたのに傷一つ表面に残してはいない。
このままでは悪戯に顎を疲弊させるだけだ。
漠然とそう思った。
ようやく諦めのついた頃、下げた目線の先に砂で汚れた前足が目に入った。
ふと、昔、自分が人間だった頃のことを思い出した。
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